頸城「天狗原山(山スキー)」
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 小谷温泉の栃の樹亭手前の駐車場を出発したのは7時前だった。除雪された道の2メートルほどの雪壁をよじ登っていよいよスタートである。ところがいきなり思いもよらないアクシデントに見舞われた。ぼくのシールの糊が弱くなっていて、ほんの少し歩いただけで両方ともシールがはがれてしまったのである。何ということだ。絶好のコンディションだというのに。しかし幸いにも荒川さんがビニールテープを持っておられたので、それで3〜4カ所を止めて何とか歩き出すことができた。
 いつもなら、何ということもなく登れるくらいの傾斜でもズリズリと板が滑って、予想外の事態に気分が滅入ってきた。ほんの少し前には、久しぶりの快適な山スキーの期待にわくわくしていたというのに、もうすでに気分は焦燥気味である。実は先月、土蔵岳へ行った時に湿雪がシールにダンゴになって困ったので、帰ってからシールにワックスを塗っておいたのだが、どうもそれが逆効果になったようだ。板のままではどうにも登れずに、板を持って上がったりした部分もあり、稜線へ出た時には体力の半分くらいは消費してしまっていた。
 天気は良く、後立山の山並みがきれいに見渡せる。ルートも美しい樹林帯だが、そんなものを楽しめる余裕はない。大塚さんとはもはやペースが合わなくなっているので、各自自分のペースで自由に歩くことにした。幸い携帯電話が通じるので、携帯で随時連絡を取ることにした。
 1時半頃、大塚さんからすでに頂上に到着しているとの電話。このまま進めばあと1時間くらいで頂上に着くだろうか。そうこうしていると荒川さんが現れた。荒川さんはもうここでやめるとかで、ビールを出しておられる。「せっかくなのでもう一息頑張ったら」と言って、先に出発した。最後の登りはさらに苦しく、後から来た元気そうな人たちにごぼう抜きに抜かれていった。
 斜面の上部に大塚さんの姿が見える。何とかそこへたどり着くと、頂上はなだらかな斜面をもう一息行ったところだった。頂上は2時50分。かつて、すばらしい山スキーを味わった焼山と火打山がすぐそこに見える。しかし時間も時間なので、ビールを呑みながら下りの準備をした。体力的にはもうほとんど目一杯の状態だが、後は下りだけなので何とかなるだろう。ここから沢を滑るというグループに一声かけて、大塚さんの待っている所まで下ったら、荒川さんが到着されていた。ここまで来て頂上へ行けないのは非常にもったいないが、時間を考えると致し方ないだろう。久しぶりに3人が一緒になって、ダウンヒルを開始した。
 最初は樹木のほとんどない開けた斜面で、雪質も良くて快適だったが、樹林帯に入ると一気に雪が重くなってきた。疲れた脚にはこの重い雪は非常にこたえる。大塚さんは奇声を上げながら気持ち良さそうに降りていかれるが、こちらは1ターン毎が大変な労力である。これまでの山スキーでは、どれほど登りで疲れていても下りになれば何とかなっていたし、下りがつらいと感じたことはなかったのだが。
 登りで稜線に上がった場所より少し手前で、左の沢筋にトレースらしきものが見える。しかし地図を見ると、ここを降りていくと林道に出る所が断崖になっているようだ。そんなところを大塚さんは「様子を見てくる」と言って降りていかれたが、我々はしばらく忠実に稜線をたどることにする。
 また、小さなアップダウンに苦しめられている頃、大塚さんから「林道に降りた」との電話。最後の下りは登った谷ではなくてもう少し先の尾根の方が良さそうとのアドバイスを受け、登りのトレースを見送って別のパーティのトレースを追った。稜線からの下りは確かに登った谷よりは快適な斜面だったが、気温も下がってきていて固いアイスバーンになっている。ガリガリと派手な音を立てながら、最後の脚力を振り絞って何とか大塚さんの待つ林道に降りることができた。
 固い雪の林道をジェットコースターのように下って、栃の樹亭の手前の橋のところへ来ると、ちょうど頂上直下で別れたパーティが沢を降りてきたところに出会った。スキーを持って少し登り返して、5時過ぎにようやく車に到着した。
 身の回りを整理してから栃の樹亭の温泉へ行った。疲れ切って冷えた身体には、温泉ほど気持ちの良いものはない。登り下りとも技術面をもう少し向上させて、これくらいの条件のルートは楽しめるようになりたいものである。(松田 記)

・日 程=3月3日(夜)〜5日(日)
・参加者=大塚勇三・荒川聖一・松田仁志
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