朝から雲が広がり、雨も降りだすような天気になった。車のフロントに雨粒がつく。しかし、登山口の毛受(めんじゅ)の森に着くといく分空が明るくなってきた。かえって涼しい分、今日の登山は楽だ。
行市山は、その昔賤ヶ岳合戦の折、余呉湖周辺に攻め入った秀吉軍と対峙する柴田軍との最前線に位置する。山頂からはその周辺の山域をすべて見渡せ、秀吉軍の砦とその動きを見ることができる場所だ。山麓からは毛受兄弟砦、金森長近砦、原長頼砦、中腹には前田利家、山頂には佐久間氏と重層に山城が作られ、背後の柳ヶ瀬中尾山には柴田勝家本陣がある。中世戦国時代の戦史の表舞台、この地域に約10万の兵士が殺到し、戦いが繰り広げられた。芭蕉の「…つわものどもが夢の跡」がよく似合う場所だ。
登山口の毛受兄弟の森には、兄弟の墓があり、時期がら栃の実が転がっている。杉ヒノキの植林と自然林が混じる尾根筋をゆっくり登っていくと、樹林下に台地上の広場があり、そこは皆砦跡である。タカノツメ、コナラ、アカマツ、ソヨゴなどに混じってシロダモ、ウラジロノキ、ユズリハなども見られる。時期がら朱色のキノコや30pもあるアワタケが目につく。標高500mまで登ると、ブナの木やミズナラに気づくコシアブラやホウノキ、イヌシデが増えてくる。変わった木では、ヤマナラシ、ナツツバキ。山頂は、今でも広場になっており、南東方向の展望が良い。砦跡の看板の奥に三等三角点があった。下りは、東の尾根をまっすぐ下り林道に出る。30分ほどの林道歩きの後は、中谷山で登りの道と合流し、登山口に降りる。先人たちの抗争に思いを馳せ、自然の連鎖を観察するいい山行だ。
(服部 記)
・ 日程=2020年9月16日(水)晴れ
・ リーダー=服部忠 サブリーダー=駒田一郎
・ 参加者=10名
・ コース=毛受の森(9:00)〜登山口(9:20)〜毛受兄弟砦跡(9:40)〜中谷山(10:10)
〜別所山砦跡(10:40)〜(11:30)行市山山頂(12:15)〜林道出会い(12:45)
〜中谷山(13:30)〜(13:50)登山口
Photo by T.Hattori&M.Nakamura |
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