北アルプス「白馬乗鞍岳(山スキー)」
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左上 ロープウェーを降りて歩き始めたところ、 右上 蓮華温泉ロッジ
左中 正規のコースから尾根を乗り越し振子沢へ、 右中 青空が広がってきた
左下 天狗原から大渚山方面、 右下 松田さんの快適な滑り(雪質はやや重)
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 小谷の道の駅から栂池スキー場まで移動してきた頃には、雨が次第にみぞれに変わってきた。ゴンドラに乗り込んで上がり始めるとやはり雪。それも猛烈な雪降りとなった。
 ロープウェイに乗り換え、雪の中を歩き始めた。どうやら天狗原へは我々が先頭のようだ。しかし出だしから登りのルートを間違え、いやなトラバースをして正規のルートに合流した。下を見ると天狗原へと登る他のパーティの連なりが見えていた。ここは約1900m地点、今日は天狗原までわずか300mほどの登りがあるだけ。
 風雪で視界もあまりきかず、ひたすら登りを続けたので天狗原までは快調なペースだった。しかし問題はここからだ。視界が悪く地形の様子はまったくつかめない。それと猛烈な風が吹きなぐり、時折耐風姿勢をとらないと立っていられなくなってきた。
 振子沢への下り出しが分かるかどうかが最大のキーポイントになるのだが、広く緩やかな尾根上ではほとんどポイントとなるものがなく難しい。標識もあるが確認にはなっても進むべき方向の役には立たない。おまけに爆風のようなこの風では何をするにも面倒になる。リーダーの記憶では、乗鞍の斜面に突き当たって、その斜面に沿って右へと下れば振子沢へと入れるということなので、手探り状態でゆっくりと進んだ。
 ふと見ると、途中で抜かれた10人ほどのパーティが進んでいた。その後を追いやがて追いつくと、先方のリーダーらしき人が話しかけてくるが、風でほとんど聞こえない。グループはツアースキーのパーティのようで、叫んでいる彼がガイドで他の人たちはお客さんのようだった。斜面らしきところに突き当たっているので、ここが下り出すところらしいと判断した。松田さんのGPSで確認しても間違いなさそうで、ゆっくりと進み出すとゆるやかな下りとなっていく。 急な下りとなる手前でシールをはずした。早くこの強風から逃げ出したくて、手早く滑降の準備をし、何も食べずに谷へと下った。谷はすぐに急斜面となり思い切って飛び込んで行く。雪は重いがふかふかだ。風が吹きつのり雪が舞い、雪面が見にくくて宙に浮いているよう。それでもみんな果敢にターンを繰り返し滑って行った。
 いったん広く緩やかな斜面となり再び急激に落ち込む。少し慣れも出て雪にまみれながら滑る。どんな条件でもやっぱり新雪を滑るのは楽しい。ふと横を見るとガイドの華麗なテレマークターンが、雪を蹴散らして行く。お見事、呆然と見送った。
 そしてこの急斜面が終わると、振子沢の名前通りのゆるやかなハーフパイプのような谷が続いた。そして他のパーティも続いてきて賑やかになってきた。新雪は短時間の間に60〜70cmほど積もってたようだ。湿雪でおまけに黄砂の影響か、黄粉のように黄色い雪に埋もれた谷を、幾つかのパーティが前後しながら下って行く。
 途中、ガイドが先導するツアーパーティが谷の斜面を少し高くトラバースしていたが、私たちは谷を下った。実際のルートは、彼等が行く通りここで尾根を乗り越え隣りの谷へと下っており、私たちは間違えたルートを下ってしまった。しかしこの谷もやっかいなところはなく、無事車道へと飛び出した。後で小屋で確認すると、小屋から下流に向かって二つ目の谷がコースになっているという。我々が下ったのは三つ目で、もうあと小屋まで30分ほどの距離のようだ。ところが我々が先頭を切ってこの間違ったコースを下っていると、そのシュプールにつられて次々と他のグループもこの谷を下ってきて、林道に出たところで十数人の集団に膨れあがっていた。私たちもいい加減だったが、他のパーティもただシュプールについてくるだけで、よく分からずに下ってきたようだった。
 林道から蓮華温泉までは若い男性の二人組がトップでリードしてくれた。車道の形跡はほとんどなく、ただの斜面が続いているだけで、雪が切れた断面を見ると、7〜8mほど積もっているところもある。すごい雪の量だった。一つ、二つと谷を確認し、三つ目の谷を回り込んだところで蓮華温泉と出合った。

 翌朝の出発はやはり一番乗りだった。昨日もトップ、今日もトップでは気が重いが、何もシュプールのない雪を歩くのは気持ちがいい。 今日は昨日下った振子沢の登り返しだ。弱い冬型で晴れ間が僅かに覗いているが、やはりまだ風が強い。宿から二本目が振子沢へのコースとなる谷だ。なるほど谷は浅くて歩きやすい。谷を詰めそのまま進むと自然に隣りの谷へと下るようになっていた。雪はところどころで潜るものの至極快適で、けっこう締まっている。昨日の怒濤の強風もなく、無人の谷を交替でラッセルを続けた。ピッチも早く、何と昨日の滑り下りより今日の登りの方が短い時間で上がれた。
 天狗原に登るとすごい人、昨日とは何という差だろうか。緊迫感などまるでない。ところがここですれ違った蓮華温泉へと滑るという山スキーの登山者から、振子沢で昨日雪崩での遭難事故があったことを聞かされた。私たちが一番に下っているのでその後のことだろうが、雪崩の跡などなかったし、宿でもそんな話題は出ていなかった。しかしこの遭難事故は翌日の新聞やテレビで報道されていた。雪崩の場所は不明だったが、三人の方が亡くなるという痛ましい事故だった。やはりあの嵐で方々で雪崩などの遭難事故が起こっていたようだ。
 しかし、今の天狗原はそんな遭難事故があったとは思えない明るさだった。ここからの下りは気分を切り替えて、思いっきり滑りを楽しむしかない。たっぷりの新雪は少々重たいが、遭難事故という重たい気分を振り払う、爽快な下りだった。憧れのアオモリトドマツの樹林を縫っての滑りも経験できたし、ツアースキーの醍醐味たっぷりの素晴らしいフィナーレとなった。 (草川 記)

・日 程=4月7日(金)夜〜9日(日)
・参加者=5名
・リーダー=田代妙子/サブリーダー=山崎大造、松田仁志・荒川聖一・草川啓三
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